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大阪カジノ構想は、どこまで行ってもノープラン

本当は誰も期待していない「大阪カジノ」

「日本文化」があれば、世界を圧倒できるのか?

 また大阪府構想は「文楽や歌舞伎など日本文化をリードしてきた大阪の和のテイスト」を活かした「世界中で大阪でしか鑑賞できないショー・エンターテイメント」として「日本文化の体験ができる施設(茶道、華道、和装、温泉、武道、禅など)を提供する。

 しかし、文楽や歌舞伎等の日本文化を活用したショーが世界最高水準のエンターテイメントになるか、それを楽しむためにわざわざIRに足を運ぶのかは極めて疑問である。この点に関して関西経済同友会のKIR構想は、「パフォーマンス、フェスタ、スポーツ・格闘技、カーニバル、バザール等、言語によらず訪問客を惹きつけるエンターテイメント」として博物館、美術館、劇場、イベント広場のIR施設内での建設を提起するにとどまっている。

 日本固有の文化については関西圏にある既存の文化施設とのシナジー効果を強調するのみであり、世界のIRでの標準的なエンターテイメント機能とどの程度の差別化を行うことができるのかが不明である。これではMICE機能とエンターテイメント機能の「他地域を圧倒する世界最高水準」の内容に到底なっているとは思えず、世界の他地域のIRを圧倒して顧客を集客できるとは言えないのではないだろうか。

 ちなみに表2-2では、大阪市臨海地域での立地で60キロ圏内1555万人中、毎年約92万人がカジノを訪問するとして367億円のカジノ(ギャンブル)収益の予想を算出している。これは海外のカジノの実績値をベースにした推計であるが、この程度の収益エンジンでは巨大なIRを支えることはできないのは明らかであろう。

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鳥畑 与一

とりはた よいち

1958年生まれ。静岡大学人文社会科学部経済学科教授。大阪市立大学経営学研究科後期博士課程修了。専門は国際金融論。著書に『略奪的金融の暴走:金融版新自由主義のもたらしたもの』(学習の友社、2009年)、「グローバル資本主義下のファンド」(野中郁江他編著『ファンド規制と労働組合』序章、新日本出版社、2013年)、「カジノはほんとうに経済的効果をもたらすのか?」(全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会編『徹底批判!! カジノ賭博合法化―国民を食い物にする「カジノビジネス」の正体』第2章、合同出版、2014年)などがある。


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